ローン残債・オーバーローンでも投資マンションを売る方法
この記事のポイント
- オーバーローンでも自己資金補填や任意売却で売却は可能
- 任意売却は金融機関の同意が必須で信用情報に影響が残る
- 手残りは売却価格ではなく仲介手数料等控除後の金額で判断
- 譲渡所得税は所有期間5年超で税率がおよそ半分に下がる
- 複数物件保有時は共同担保の有無も含め物件ごとに残債を確認
ローン残債があっても投資マンションは売却できる
ローンが残っていても、売却代金と自己資金などで一括返済できれば、通常の仲介や買取による売却を進められます。

アンダーローンとオーバーローンの違い
最初に確認したいのは、売却後にローンを完済できるかどうかです。
項目 | アンダーローン | オーバーローン |
|---|---|---|
売却価格と残債 | 売却価格が残債を上回る | 売却価格が残債を下回る |
通常売却 | 完済資金を確保できれば進めやすい | 不足分への対応が必要 |
主な対応 | 売却代金で返済 | 自己資金補填、金融機関への相談、任意売却など |
ただし、売却価格と残債の差だけで判断しないことが重要です。 仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用、一括返済に伴う手数料なども必要になるためです。
たとえば残債4,000万円で4,000万円で売れたとしても、諸費用を差し引けば完済資金が不足する可能性があります。反対に、残債4,500万円で売却価格4,000万円なら、少なくとも500万円の差額に諸費用を加えた資金への対応が必要です。
まず残債と一括返済額を確認する
ローン残債は、金融機関の残高証明書や返済予定表で確認します。決済日に必要な正確な金額は、経過利息や期限前返済手数料などを含めた一括返済額として金融機関に確認しましょう。
次に不動産会社へ査定を依頼します。査定価格は成約価格ではないため、1社だけでなく複数社の査定根拠や販売戦略を比べることが大切です。
売却できるか判断するときは、次の式で考えると整理しやすくなります。
想定売却価格 - 売却諸費用 ≧ 一括返済額
この金額が不足する場合は、オーバーローンへの対応を検討します。
譲渡所得税はローン残債とは別に考える
ローンが多く残っているからといって、譲渡所得が小さくなるわけではありません。土地・建物の譲渡所得は、原則として売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(出典2)(出典12)。
建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いて計算するため、購入時の価格をそのまま取得費にできるとは限りません。売却時に必要な完済資金と、売却後に発生する可能性がある税金は分けて試算しましょう。
オーバーローンの投資マンションを売る5つの対処法
オーバーローンでは、自己資金補填、新たな融資の相談、繰り上げ返済、任意売却、売却時期の見直しが主な選択肢です。

1. 自己資金で不足分を補填する
不足額と諸費用を自己資金で補い、一括返済できるなら通常売却を進められます。手続きが比較的分かりやすい一方、生活費や緊急予備資金まで取り崩さないよう注意が必要です。
残債2,000万円、売却価格1,700万円なら単純差額は300万円ですが、実際には諸費用も必要です。「残債 - 売却価格」ではなく、決済日に必要な総額で判断してください。
2. 不足資金を借りられるか金融機関に相談する
不足分を自己資金で賄えない場合、金融機関へ追加融資などの可否を相談できる場合があります。ただし、投資用ローンでは居住用の買い替えローンをそのまま利用できるとは限りません。
取扱いの有無、金利、返済能力、担保評価などは金融機関ごとに異なります。新たな借入で不足分を補う方法は、借金そのものが減るわけではないため、売却後の返済計画まで確認して判断する必要があります。
3. 繰り上げ返済で残債を減らす
売却を急ぐ必要がなく、毎月の収支にも余裕があるなら、繰り上げ返済で残債を減らしてから売る方法があります。
ただし、その間も管理費・修繕積立金、固定資産税、空室時の持ち出しなどは続きます。売却を待つ期間に必要なコストと、残債が減るメリットを比較しましょう。
4. 任意売却を金融機関等に相談する
自己資金での完済が難しく、返済の継続にも支障がある場合は任意売却を検討します。任意売却では、債権者が抵当権抹消に応じることが前提です。
住宅金融支援機構も、返済継続が困難な場合の方法として任意売却を案内しており、売出価格の確認や抵当権抹消応諾の審査を経て進める仕組みを示しています(出典5)(出典11)。ただし、投資用マンションのローンは民間金融機関の商品が中心であり、具体的な条件は借入先ごとに異なります。
任意売却が成立しても、売却代金で返済しきれなかった債務は原則として残ります。また、任意売却そのものではなく、延滞や代位弁済などの事実が信用情報に影響する場合があります。
5. 売却時期を見直す
毎月のキャッシュフローがプラスで、保有を続ける余力がある場合は、売却時期を見直す選択肢もあります。
国土交通省の令和7年12月分不動産価格指数では、全国のマンション(区分所有)は225.1で前月比1.0%増でした(出典6)。ただし、これは全国の価格動向を示す指数であり、所有する投資マンションの価格が今後上がることを意味しません。
待つ場合は、家賃収入からローン返済、管理費、修繕積立金、税金、空室・修繕リスクまで差し引き、保有を続けるコストが売却延期のメリットを上回らないかを確認しましょう。
残債がある投資マンションを売却する6ステップ

STEP1. 金融機関に残債と担保条件を確認する
残高証明書だけでなく、売却予定日の一括返済額、期限前返済手数料、抵当権抹消に必要な手続きを確認します。
複数物件を共同担保にしている場合は、1室だけ売却するときの担保解除条件も確認が必要です。
STEP2. 複数の不動産会社へ査定を依頼する
査定価格と一括返済額を比較し、通常売却が可能か、オーバーローンへの対応が必要かを判断します。高い査定額だけで選ばず、周辺成約事例や賃料、利回りなど査定根拠も確認しましょう。
STEP3. 売却方法を決めて販売を始める
完済できる見込みが立てば、仲介や買取などの方法を選びます。任意売却の場合は、金融機関等との調整を先に進め、承認された条件に沿って販売する必要があります。
STEP4. 売買契約と一括返済の準備をする
買主が決まったら、決済日に合わせて金融機関へ一括返済を申し込みます。売却代金、自己資金、諸費用を含め、当日に資金不足が起きないよう最終金額を確認します。
STEP5. 決済と抵当権抹消登記を行う
決済では売却代金を受け取り、ローン返済後に抵当権抹消のための書類を受け取ります。通常は司法書士が所有権移転登記とあわせて手続きを進めます(出典7)。
STEP6. 賃貸中なら入居者への通知・引継ぎを行う
オーナーチェンジで売却する場合は、賃貸借契約、敷金、賃料の振込先、管理会社などを買主へ引き継ぎます。入居者への通知内容やタイミングは、売主・買主・管理会社で調整しましょう(出典8)。
査定前にそろえておきたい資料
投資マンションは、部屋そのものだけでなく、賃貸条件や管理状況も査定材料になります。
売却を具体化する前に、ローン関係の書類と物件関係の資料をまとめておくと、査定から決済までの確認がスムーズです。
- ローンの残高証明書・返済予定表
- 金銭消費貸借契約書や担保設定が分かる資料
- 賃貸借契約書、現在の賃料・敷金・更新条件
- 管理費・修繕積立金の金額と滞納の有無
- 固定資産税・都市計画税の課税明細
- 管理規約、総会議事録、長期修繕計画など
賃貸中のオーナーチェンジ物件では、買主は自分で住むためではなく、どのくらいの家賃収入があり、どの程度の支出が続くかを重視します。そのため、賃料だけでなく管理費・修繕積立金、管理委託料などを整理し、年間収支を説明できる状態にしておくことが大切です。
査定を受ける際は、各社に「想定成約価格」「仲介手数料などの諸費用」「決済時の想定手残り」を同じ条件で出してもらうと比較しやすくなります。査定額が高くても、販売期間が長くなる前提だったり、値下げを見込んだ提案だったりする場合があります。価格だけでなく、どのような買主を想定して、どの期間で売る計画なのかまで確認しましょう。
空室の場合は、現在の募集賃料だけでなく、直近の賃貸履歴や原状回復の状況も査定材料になります。売却価格の査定とローン残債の比較だけでなく、投資物件としての収益性を示す資料までそろえておくと、不動産会社から販売方法の提案を受けやすくなります。
売却前に確認したい費用・税金・リスク
売却価格ではなく、完済後にいくら不足するか、または手元にいくら残るかで判断します。
仲介手数料などを差し引いて手残りを計算する
売却価格が400万円を超える通常の売買では、仲介手数料の上限は速算式で売却価格×3%+6万円+消費税と計算できます(出典13)。このほか、印紙税、抵当権抹消登記費用、金融機関の一括返済手数料などがかかる場合があります。
たとえば売却価格2,000万円、残債1,900万円なら差額は100万円ですが、諸費用を差し引けば完済資金が不足する可能性があります。
譲渡所得税は所有期間で税率が変わる
土地・建物の譲渡所得は、売却年の1月1日時点の所有期間で長期・短期を判定します(出典12)。
区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
さらに、2037年までは所得税額に対して復興特別所得税が加算されます(出典12)。
マイホームの3,000万円特別控除は居住用財産を対象とする制度です(出典14)。単に投資・賃貸用として保有しているマンションには、通常この特例は使えません。 過去に自宅として利用していたなど事情がある場合は適用要件が変わるため、税務署や税理士へ確認しましょう。
複数物件・共同担保は早めに確認する
複数の投資物件を保有している場合、残債や担保設定を物件ごとに一覧化しておくと、売却の優先順位を判断しやすくなります。
特に共同担保では、売却する1室の残債だけ返済すれば担保を外せるとは限りません。金融機関が求める返済額や担保解除条件を確認してから査定価格と比較してください。
売却を見送る場合も収支を再計算する
売却活動は、売買契約を締結する前であれば見送れる場合があります。ただし媒介契約の内容によって費用負担が生じることがあり、売買契約締結後は自由に解除できるとは限りません。
保有を続ける場合は、ローン返済に加え、管理費・修繕積立金、税金、空室、設備交換などを含めた年間収支を再計算しましょう。「売ると損だから持つ」ではなく、「今売る場合」と「保有を続ける場合」の総負担を比較することが大切です。
まとめ
ローン残債がある投資マンションでも、決済時に抵当権を抹消できる見通しを立てれば売却できます。 まず金融機関で一括返済額と担保条件を確認し、複数社の査定と比較しましょう。
オーバーローンなら、自己資金による補填、融資の相談、繰り上げ返済、任意売却、売却時期の見直しから、自分の資金状況に合う方法を選びます。売却価格だけでなく、諸費用、税金、売却後の残債まで含めて判断することが重要です。
判断に迷う場合は、金融機関と不動産会社の双方に同じ前提条件を伝え、完済に必要な金額と想定手残りを数字でそろえてから比較すると、選択肢を整理しやすくなります。
出典
- ローン残債があると投資用マンション売却はできない?流れを徹底解説(https://www.homes.co.jp/satei/media/entry/202404/1701)
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁 — (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm)
- 投資用マンションの売却で残債が残る場合の対処法| オーバーローンでも売れる方法を解説 - 一般社団法人 全国任意売却協会 — (https://963281.or.jp/outstanding-balance/)
- 投資マンションを途中でやめたい方へ|損失を抑えた売却タイミングと手放すまでの全手順 - 一般社団法人 全国任意売却協会 —
(https://963281.or.jp/sell-process/)
- 融資住宅等の任意売却|住宅金融支援機構 — (https://www.jhf.go.jp/hensai/baikyaku.html)
- 報道発表資料:不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)を公表 ~不動産価格指数、住宅は前月比0.5%増加、商業用は前期比0.2%減少~ - 国土交通省 — (https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00256.html)
- 不動産登記の申請書様式について:法務局 — (https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html)
- 民法 | e-Gov 法令検索 —
(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
- ワンルーム投資を辞めたい時の正解は? 損を防ぐ出口戦略と判断基準 - 一般社団法人 全国任意売却協会 —
(https://963281.or.jp/want-to-quit-investing)
- 投資用マンションの売却と売却後の残債 | 不動産投資失敗による任意売却 - 一般社団法人 全国任意売却協会 — (https://963281.or.jp/cases/cases_investment/28916/)
- N_13-01-00任意売却パンフレット — (https://www.jhf.go.jp/files/topics/5253_ext_99_0.pdf)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁 — (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)
- 不動産取引に関するお知らせ(仲介手数料)|国土交通省 — (https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html)
- No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁 — (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
※本記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の売却・融資・税務・法的判断を保証するものではありません。制度や契約条件は変更される場合があります。最新情報は金融機関、国税庁、法務局などの公式情報を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。
※ 掲載内容は執筆時点の情報です。最新情報は各自治体・関係機関の公式ホームページをご確認ください。
監修・執筆
鳰川 弥
宅地建物取引士
私営業スタイル ~接客時に大切にしていること~
いつでもお客様のご相談にお答えできるよう、横浜元町店の開店時に会社からすぐ近くの場所に引っ越してまいりました。それ程この仕事が好きな訳ですが、その根底には「お客様のお役に立ちたい」という想いがございます。
「お客様の幸せに繋がるご提案をさせていただき、お客様の笑顔に繋げるお手伝いをする。」今後もお客様のお役に立てるよう、より一層の精進を重ねてまいります。
よくあるご質問
Q ローン残債がある投資マンションでも売却できますか?
できます。通常は売却代金や自己資金でローンを完済し、決済時に抵当権を抹消します。完済できない場合は、金融機関への相談や任意売却などを検討します。
Q オーバーローンなら必ず任意売却になりますか?
必ずではありません。自己資金で不足分と諸費用を補えれば、通常売却が可能です。追加融資の可否を金融機関に相談したり、残債を減らしてから売ったりする方法もあります。
Q 任意売却をすると信用情報に必ず登録されますか?
任意売却そのものが必ず登録されるわけではありません。ただし、返済の延滞や代位弁済などが発生していれば、その事実が信用情報に登録される場合があります。
Q ローン残債以外にいくら用意すればよいですか?
仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用、一括返済手数料などを見込みます。正確な金額は売却価格や金融機関の契約条件で異なるため、査定後に「売却価格 - 諸費用」と一括返済額を比較してください。
Q 売却を待てばオーバーローンは解消しますか?
将来の価格上昇は保証されません。ローン返済で残債が減る一方、管理費や税金、空室・修繕などの保有コストも発生します。売却を待つ場合も、保有期間中の収支を試算して判断する必要があります。