サブリース・家賃保証付き投資マンションの売却の注意点
この記事のポイント
- オーナーチェンジは売却が早いが買主は投資家に限定される
- 解約には借地借家法上の正当事由と原則6カ月の通知期間が必要
- 違約金の金額は相場で断定できず契約書の中途解約条項次第
- サブリース家賃が周辺相場より低いと収益還元法で査定額が下がりやすい
- 契約書確認とサブリース売却の実績がある不動産会社選びが成否を分ける
サブリース付き投資マンションを売る2つの方法
サブリース契約を引き継いで売る方法と、解約の可否を確認したうえで契約を終了させて売る方法があります。

まず、2つの売却方法の違いを整理すると次のとおりです。
比較項目 | オーナーチェンジ | 解約後に売却 |
|---|---|---|
サブリース契約 | 買主へ引き継ぐ | 解約後は引き継がない |
主な買主 | 投資家 | 物件状況により投資家・実需 |
解約交渉 | 原則不要 | 必要 |
売却までの期間 | 比較的進めやすい | 解約手続きに時間がかかる場合あり |
査定への影響 | 保証家賃・契約条件が影響 | 市場家賃などを踏まえて評価できる場合あり |
主な注意点 | 買主が契約条件を承継する | 正当事由・違約金・空室化の可否を確認 |
早めに売却したいならオーナーチェンジ、解約による価格改善を狙うなら解約費用と査定差を比較するのが基本です。
サブリースを引き継ぐオーナーチェンジ
サブリース契約を維持したまま、物件と貸主としての契約上の地位を買主へ引き継ぐ方法です。契約終了を待たずに売却を進められるため、解約交渉が難しい物件では現実的な選択肢になります。
一方、主な買主は賃貸収益を目的とする投資家です。買主は既存のサブリース会社や保証条件を前提に収益性を判断するため、保証家賃・契約期間・家賃改定条件・免責期間などが価格判断に影響します。
売却前には、サブリース会社に契約承継の手続きや必要書類を確認し、買主へ契約内容を提示できる状態にしておきましょう。
サブリースを解約してから売る
契約を終了できれば、サブリース会社とのマスターリース契約に縛られず売却できる可能性があります。ただし、オーナーの希望だけで一方的に解約できるとは限りません。
借地借家法では、建物賃貸借について貸主からの解約申入れや更新拒絶に正当事由を求めています(出典1)。国土交通省も、マスターリース契約には借地借家法28条が適用され、オーナー都合の解約には正当事由が必要と案内しています(出典6)(出典7)。
また、マスターリース契約を終了させても、転借人との関係がどのように扱われるかは契約関係や終了理由によって異なります。「サブリースを解約すれば必ず空室で売れる」とは考えず、入居者がいる場合は不動産会社や専門家に確認してください。
どちらが有利かは3つの数字で比べる
売却方法を決めるときは、次の3点を比較すると整理しやすくなります。
- 現在の保証家賃と周辺の募集・成約家賃との差
- サブリース付きと解約後それぞれの査定額
- 解約に必要な費用と、解約までにかかる期間
保証家賃が周辺水準と大きく変わらず、早めに売りたい場合はオーナーチェンジが向きます。一方、保証家賃が低く、解約後の査定改善が費用負担を上回るなら解約を検討する余地があります。
違約金・空室期間の収入減・ローン返済まで含めた手残りで比較することが大切です。
サブリース契約で売却前に確認するポイント
売却方法を判断する前に、契約書では次の5項目を確認します。
確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
契約期間 | 満了日、更新方法 |
中途解約 | 中途解約条項の有無、条件 |
予告期間 | 何カ月前までに通知が必要か |
解約損害金 | 算定方法、金額、発生条件 |
家賃改定 | 見直し時期、減額条件 |
保証家賃は固定とは限らない
サブリースは、オーナーがサブリース会社へ物件を貸し、同社が入居者へ転貸する仕組みです。契約によっては空室時でも一定の賃料を受け取れますが、保証額が将来も固定されるとは限りません。
国土交通省は、マスターリース契約について、家賃の定期的な見直しや借地借家法32条に基づく賃料減額請求の可能性をオーナーへ説明すべき事項として示しています(出典6)。
そのため売却時は、現在の受取家賃だけでなく、家賃改定条項、免責期間、更新条件、修繕費などの負担区分を確認します。
解約予告期間だけでは解約可否を判断できない
期間の定めのない建物賃貸借では、借地借家法27条により、貸主の解約申入れから6カ月を経過して終了する規定があります。ただし、同法28条の正当事由も必要です(出典1)。
契約書に「3カ月前」「6カ月前」などの通知期間が書かれていても、その期間を守るだけでオーナー側から必ず解約できるとは限りません。 定期借家か普通借家か、契約期間や中途解約条項、合意解約の可能性などを確認する必要があります。
違約金は契約書で確認する
サブリース解約に伴う違約金について、一律の相場はありません。契約書に解約損害金や違約金の算定方法が定められている場合は、その条項が確認の出発点です。
合意解約で違約金を求めない条件になる場合もあれば、予告期間を守らない解除で損害金が発生する場合もあります。契約書を確認せず「家賃○カ月分」と決めつけないことが重要です。
サブリース付きだと査定にどう影響する?
投資物件では、契約後に買主が得られる収益が価格判断の重要な材料になります。
保証家賃が低いと収益性も低く見える
投資用マンションでは、家賃収入や利回りを基準に価格を検討する収益還元の考え方が使われます。そのため、サブリース会社から受け取る家賃が低い物件は、同じ立地・築年数でも投資家から見た収益性が低くなる可能性があります。
たとえば単純な試算として、年間家賃を期待利回りで割ると次のようになります。
想定月額収入 | 年間収入 | 利回り5%での単純試算 |
|---|---|---|
8万円 | 96万円 | 1,920万円 |
6万円 | 72万円 | 1,440万円 |
これは家賃と利回りだけを使った説明用の試算であり、実際の査定額ではありません。実務では立地、築年数、管理費・修繕積立金、契約条件、賃貸需要なども考慮されます。
「解約すれば高く売れる」とも限らない
解約後に査定が上がるとしても、違約金や空室期間の収入減が大きければ、手残りは改善しないことがあります。また、解約交渉に時間がかかれば、その間もローン返済や管理費などの負担が続きます。
したがって、次のように比較します。
解約後の想定手残り = 解約後の想定売却額 - 売却諸費用 - 解約費用 - 解約期間中の負担
オーナーチェンジの査定と解約後の査定を同じ不動産会社だけでなく複数社から取り、前提条件まで確認すると判断しやすくなります。
サブリース付きマンションを売る手順
契約内容を確認してから査定を取り、解約と承継の両方を比較する順番が効率的です。

STEP1. 契約書を確認する
まずマスターリース契約書を用意し、契約期間、家賃、家賃改定、免責期間、中途解約、予告期間、違約金を確認します。
契約書が手元にない場合は、サブリース会社へ写しの交付を相談します。契約内容を把握しないまま査定だけを取っても、正確な収益条件を買主へ提示できません。
STEP2. 保証家賃と周辺家賃を比較する
現在の保証家賃と、同じマンションや周辺の類似物件の賃料を比較します。募集家賃は必ずしも成約家賃ではないため、可能であれば不動産会社に賃貸成約事例も確認してもらいましょう。
STEP3. 「契約承継」と「解約後」の両方で査定を取る
サブリース契約を引き継いだ場合と、解約できた場合の2パターンで査定を依頼します。このとき、価格だけでなく想定買主、販売期間、査定根拠も比較します。
STEP4. 解約するなら先に条件を確認する
解約を希望する場合は、サブリース会社へ契約条件と解約可否を確認します。正当事由の判断や交渉が難しい場合は、弁護士などへの相談も検討してください。
一方、オーナーチェンジなら契約承継の方法やサブリース会社の承諾・届出の要否を確認します。
STEP5. ローン残債と手残りを確認して販売する
ローンが残っている場合は、金融機関で一括返済額を確認します。売却価格が残債を下回る場合は、自己資金で不足分を補うか、金融機関へ相談する必要があります。
完済が難しく返済継続にも支障がある場合、任意売却を検討するケースもあります。ただし、任意売却には債権者の同意が必要で、売却後も残債が残る場合があります。
売却にかかる費用も先に確認する

不動産売買契約書には印紙税がかかり、2026年10月現在の軽減措置は2027年3月31日までに作成される契約書が対象です(出典2)。契約金額1,000万円超5,000万円以下なら1万円、5,000万円超1億円以下なら3万円です。
このほか、仲介手数料、ローンの一括返済手数料、抵当権抹消登記費用などが発生する場合があります。解約費用だけでなく、売却諸費用とローン残債まで含めた手残りで比較しましょう。
不動産会社選びで確認したいこと
サブリース付き物件は契約確認が多いため、一般的な仲介実績だけでなく、次の点を確認します。
- サブリース付き投資マンションの売却実績
- オーナーチェンジと解約後の両方で査定できるか
- 契約承継やローン残債への対応を説明できるか
契約解釈や正当事由に争いがある場合、不動産会社だけで判断せず、弁護士など適切な専門家へ相談できる体制があるかも確認すると安心です。
売却判断の前に作っておきたい比較メモ
売却方法を比べるときは、次の項目を一枚にまとめておくと判断しやすくなります。
- 現在の保証家賃と周辺家賃
- 管理費・修繕積立金などの保有コスト
- 契約満了日・家賃改定・中途解約・違約金の条件
- ローン残債と一括返済額
- サブリース付き・解約後それぞれの査定額
「査定額が高い方」ではなく、解約費用や保有コストまで引いた最終的な手残りが大きい方を選ぶのが基本です。
オーナーチェンジで売る場合は、契約書、家賃の入金履歴、家賃改定通知など、買主が収益条件を確認できる資料もそろえておきましょう。
まとめ
サブリース付き投資マンションの売却では、契約を引き継ぐか、解約を目指すかを最初に比較することが重要です。
オーナーチェンジなら解約交渉を避けやすい一方、保証家賃や契約条件が査定に影響します。解約する場合は、中途解約条項だけでなく、借地借家法上の正当事由や合意解約の条件も確認が必要です。
まず契約書、保証家賃、ローン残債を整理し、サブリース付き・解約後の2パターンで手残りを比較してください。
出典
- 借地借家法 | e-Gov 法令検索 — https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- サブリース付き投資用マンションを売却する方法|解除と売却どちらが先かを徹底解説 - 一般社団法人 全国任意売却協会 — https://963281.or.jp/sublease/
- 報道発表資料:不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)を公表 ~不動産価格指数、住宅は前月比0.5%増加、商業用は前期比0.2%減少~ - 国土交通省 — https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00256.html
- 宅地建物取引業法 | e-Gov 法令検索 — https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 適正化のための措置|賃貸住宅管理業法ポータルサイト - 国土交通省 — https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/sublease.html
- 賃貸住宅管理業 よくある質問(FAQ)|国土交通省 関東地方整備局 — https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/index00000029.html
※ 掲載内容は執筆時点の情報です。最新情報は各自治体・関係機関の公式ホームページをご確認ください。
監修・執筆
鳰川 弥
宅地建物取引士
私営業スタイル ~接客時に大切にしていること~
いつでもお客様のご相談にお答えできるよう、横浜元町店の開店時に会社からすぐ近くの場所に引っ越してまいりました。それ程この仕事が好きな訳ですが、その根底には「お客様のお役に立ちたい」という想いがございます。
「お客様の幸せに繋がるご提案をさせていただき、お客様の笑顔に繋げるお手伝いをする。」今後もお客様のお役に立てるよう、より一層の精進を重ねてまいります。
よくあるご質問
Q サブリース契約中でもマンションを売却できますか?
できます。契約を買主へ引き継ぐオーナーチェンジと、契約終了後に売る方法があります。解約できるかは契約内容と借地借家法上の要件を確認する必要があります。
Q サブリース契約は6カ月前に通知すれば解約できますか?
一律にはいえません。借地借家法27条には貸主の解約申入れから6カ月後に終了する規定がありますが、28条により正当事由も必要です[出典1]。契約期間、中途解約条項、合意解約の可否も確認してください。
Q 違約金を払えば必ず解約できますか?
必ずではありません。違約金条項があっても、それだけで借地借家法上の要件を満たすとは限りません。契約書と具体的な事情を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
Q サブリース付きだと必ず査定額が下がりますか?
必ず下がるわけではありません。ただし保証家賃が市場水準より低い、家賃減額条項が厳しいなど、買主の収益に不利な条件があると価格評価へ影響する可能性があります。
Q 解約してから売る方が有利ですか?
物件によります。解約後の査定上昇額より、違約金や解約期間中の収入減が大きければ手残りは減ります。オーナーチェンジと解約後の両方で査定し、総額で比較しましょう。